明治四十年(1907年)四月六日 土曜
雨午後晴。
起居身體 午前六時起床、歸校して午後十一時就褥す。
見聞行事交際 午後二時中西喜一郎君赴任あり。校務を終へて後、宿直室にて茶菓を以て面識會を開く。同君頗るの大兵にして、一見朴訥、而も着實なるが如し。當校に寄宿する事とせられたれば、鱈などを調理して共に晩餐をしたゝむ。
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雨午後晴。
起居身體 午前六時起床、歸校して午後十一時就褥す。
見聞行事交際 午後二時中西喜一郎君赴任あり。校務を終へて後、宿直室にて茶菓を以て面識會を開く。同君頗るの大兵にして、一見朴訥、而も着實なるが如し。當校に寄宿する事とせられたれば、鱈などを調理して共に晩餐をしたゝむ。
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晴。
起居身體 午前六時半起床、午後十一時過就褥。脇川にて。
見聞行事交際 課業は校務多忙の爲に、午前限りとす。
本日は池田紀宗太君を訪ひ、さく子離縁問題に關する予が意見を詳陳せんと思ひゐしに、同君より來書あり、愈決定し、小兵共を本日送りとゞくる事としたりと。あゝこれ果しての決定なるか、子を思ふは親心、二人の子を母なしとなす、之が父たり母たるもの、何ぞ忍びんや。
午後六時出發して脇川に歸り、重義弟の前途問題につき、母上と協議し大要次の如く決す。〔姉上はやくおとし會とて、李崎に昨日より滞在との事〕
一、農林學校におくも成業の見込なければ、退學せしむる事。
一、弟が心身の能力甚だ鈍なる故、之を他人の手によりて使役するも、到底用に立たざるのみか、之を使ふものだになからんなれば、之の發達をはかる爲に、暫く東京の宗吾兄上の店員として、同兄上の使役を請ふ事。而して之が衣類と食費は仕送る事。
あゝ實に同弟の身の上あはれむに堪へざらずや。
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快晴、氣温漸暖かなり。
起居身體 午前七時起床、午後十時四十分就褥。
見聞行事交際 加茂農林學校教諭関三男君より、先月廿八日發の書に對する返事をたまはる。其要に曰く、重義君は正直なれども、其性癡鈍にして成績頗る不良、先學年末の職員會に於て、諭旨退學者の候補の一人として議せられしも、今一年間の成績を見る事にして、とゞめたるもの故に、大に考へたる上にて、其方針變更の如きを決せらるべしとて、一學年間の成績表をも示さる。
國語 地理 歴史 美術 物理 化學 動物 植物 鑛物 自在畫
第一學期 甲 乙 乙 乙 丙 丁 丙 丁 丙 乙
第二學期 乙 丁 丙 丙 丙 丁 丙 丁 丁 乙
第三學期 乙 丙 丙 丙 乙 丙 丁 丙 丙 乙
平均學年評點 乙 丙 丙 丙 丙 丁 丁 丁 丁 乙
用器畫 英語 体操 農業實習
丙 乙 乙 乙
丙 丙 乙 乙
丙 丁 丙 甲
丙 丙 丙 乙
あゝ何たる不成績ぞや。重義弟のみ何が故に、かくも愚鈍の頭脳を持て生まれしぞ、あゝ實に憫然に不堪。
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晴。
起居身體 午前六時起床、午後九時五十分就褥。
見聞行事交際 午前九時迄校務を執りて後、長岡へ行き校用を辨じ、午後二時加藤みよし子君を訪ふ。千代子妹も既に來會しゐ、兩君ともいとゞなつかしがり、共に懐舊を談ず。午後四時四十五分千代子妹門限のせまれりとて歸校せられ、予もまた辭せんとしたるも、堅くとゞめられて、いなみがたく、夕食の饗を受け、六時過出發し、また村上屋にて校用をたし、八時半歸校す。
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朝雪ふり、木の梢、塀の上など白妙となる。
起居身體 午前七時起床、午後十時就褥す。身體の疲勞尚癒えず。
見聞行事交際 午前九時より十時迄、入學式を舉行して後、教室に於ける兒童の席を定め、教科書を配與し、時間表を謄せしめて、零時解散せしむ。予の年功加俸給辭令〔年額廿四圓〕到着す。高橋君の退職願書を差出す。
池田紀宗太君より親展なる來書あり。さくの戻さる問題につき、愈吉村氏の歸鄕を機として、之を介して最後の交渉を試みたるも、不得要領にて、同氏は歸校し、實に途方に暮れゐるなり。如何にすべきか。賢慮承りたしと。
あゝ親心、闇にあらねど、子を思ふ道に迷ひぬるかな、なるべし、同情に堪へず。
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晴。
起居身體 午前九時起床、午後十時半就褥。昨日の疲勞甚し。
見聞行事交際 午前校丁を長岡に遣し、昨日買ひおきし物品を運搬せしむ。この序に爲二弟へ重義弟の學年成績、榮殿の成績を報ず。千代子妹、加藤君へも封書を發す。來月三日午後あたり、加藤君方を予が訪ふべければ、相會して舊を談ぜん、また此折に當校の近況も告げん、かつ加藤子君と約束の短冊書換へもなさんと。
本日の新紙に新潟師範本科入學試驗に合格したる人名記載あり。高橋君も私費生として表はされたり。同君は成績よからざりしとみえ、第一志望の給費の部にはもれたり。
夕方渡辺君方へ行き沐浴す。昨日到着しありし次の書、今朝みとめて讀む。兄上より廿七日附はがき。
甚五郎弟は廿五日、順天堂醫院にて診察を乞ひ、即日入院、廿七日午前十一時五十分より零時十五分迄の間に切開施療を受けたり。切開の箇所は肛門の左側より肛門に至るまで、長さ六寸許、肉を切取りしは方一寸二分位。手術後病室に歸り約廿分經過の後、氣づきしが、其後氣も慥かにて別状なし。たゞ全身疲勞を感じ、頭部重しと。東京本郷區湯島五丁目十番、順天堂醫院、第八十一號病室にて。
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曇り、寒さはげし、午後雪ちらゝゝふる。
起居身體 午前七時半起床、午後十一時就褥。
見聞行事交際 午前近藤學務委員來校せられ、教員住宅敷土盛請負者を伴うて、實地につき踏査し、請負契約の大要を取極めらる。午後高橋君の出發歸省を送り、兒童と共に鮫面橋の西をまはり、芹川の南方まで至りて、こゝに別る。中村君も之もて送りを濟ませられたしと、堅く乞はれたれば、其意に從ひ、こゝにて兒童をして告別せしむ。
東京兄上へ重義失敗につき、前途の目的を變更せしむべきか、意見を徴すべく書状を發し、一方、加茂農林學校教諭関三男君へ、重義の學力は成業の見込ありやにつきての、質問状を發すべく認む。
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風ふき寒はげし。
起居身體 午前九時過起床、歸校して午後十二時就褥す。身體疲勞を覺ゆ。
見聞行事交際 夕食後、中村君、別れを惜しむとて菓子一包を持參し、思出の談に夜を更かし、十二時歸り去らる。
所感 昨年の今朝、斎藤、加藤兩君を送りて、芹川の東にて別れしなり。
中村君へ色紙に認めての歌をおくる。
徳増君の別れによめる、
せりかはのかはの川水せけどなほ とゞめかねたる君にもあるかな
せりかはのいさりにあきて今日はしも 長岡のかりに出でたつ君か
高橋君に短冊にて 別れ
教子のなきかなしみておくる君 きみが心やいかにかなしき
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晴。
起居身體 午前七時起床、歸宅して午後十二時過就褥。
見聞行事交際 午前一同出勤して殘務整理をなし、午後鈴木村長へ招かれ、晩餐の饗を受く。相客は役場員一同。午後七時歸校し、重義弟歸宅しゐる筈なるにつき、彼が學年成績の如何を聞くべく、七時半出發して歸宅す。歸宅早々聞きたゞしたるに、案じの如く不結果なりきと。慨嘆。母上は昨廿五日、与板寺院へ參詣の出先にて荒巻の辻君に邂逅して、之が誘ふにまかせて、荒巻へ行き給ひしと。
所感 去年の今夜は斎藤、加藤兩君が、此地を去りかねて、此校に來りて宿られし日なり。兩子今は如何。
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晴。卒業式舉行〔第六回〕
起居身體 午前七時起床、午後九時廿分就褥。
見聞行事交際 午前八時より卒業式の準備を整へ、九時式を開始、十一時終了。村長始め學務委員、村内重立、其他父兄、青年の參列者約百五十名。本日は例によりて兒童成績品及び參考品を陳列して展覧會を開く。中村、高橋兩君、本校を去るにつき卒業式についで送別式を舉げ、終って村内重立の賛成を得て、兩君の送別會を開き折詰、酒の饗をなす。會するもの川袋校職員を合して約四十名。兩君へ當學區より慰勞と餞別をかねて、拾圓と五圓を呈す。
午後二時より卒業生一同に茶菓を供すると共に、同友會を開き、四時散會し卒業寫眞を撮る。
卒業式に於ての訓告要旨。
卒業生は今後家庭にあるものあらん。また他の校に進むものあらん。何れにしても將來は、よき日本人たらん事を切に覺悟せざるべからず。而して其の良き日本人たらんには、學校にて學びたる教をよく守りて勤むるにあり。之を勤むるには非常なる忍耐と勇氣とを以て持久し進取すべし。在校生はこれより學問の齢一を加へたれば、其齢にはぢざる成績を舉ぐるは勿論、昨日までは年長に見習ひしが多かりしに、是よりは他より見習はるゝ身分となりたるなれば、其行状に於て一段の進歩あるべし。
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晴、日暮れてより雨。
起居身體 午前六時半起床、午後十一時五十分就褥。
見聞行事交際 午前八時出發して川袋小學校卒業式に參列し、零時歸校、校務をとり午後八時に至る。
甥榮殿一學年修業成績最優等にて、級の總代となり、品行學術優等賞を受く。
千代子妹より郵便にて封書到着す。廿二日附、其の要。昨年の昨今の思出、さく子君は斷然、渡辺氏へは歸らず、全く離縁すとの報ありしとの轉報なり。
所感 昨年の今朝はうれしき約なり、將來に於て一大明光を望むの感ありしものなりき。
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雨。
起居身體 午前六時半起床、午後十一時半就褥。
見聞行事交際 本日は校務整理の爲、授業は休みとし、午前八時半より一同出勤、卒業式準備をなして、午後七時に至る。午後七時より牡丹餅晩餐にて、中村、高橋兩君の送別會を開く。食後また暫時校務をとり、九時散會す。
送別記念として、中村君に菓子盆一枚、高橋君へ鏡一箇を予、渡辺、松田三名の連名にて呈す。
午前、學務委員近藤榮五郎君及び大工二人來校、教員住宅請負の件につき協議あり。大工價挌甚だ低廉にて困難なりとて、土臺、土盛の豫算中より、貳圓を補助する事とす。
所感 去年の今宵は學年末事務せはしかりし爲に、春季皇霊祭なるにもかゝはらず、出勤執務し、加藤君は私用の爲歸宅、高橋君是また私用の爲、長岡へ行かれ、予と妹とは夜業迄におよびしが、其をりふと、予が妹に對しての一言不平をもらしたるより、いたく妹が胸をつきしものなりしを。
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晴天。
起居身體 午前七時起床、午後十一時就褥。身體疲勞を覺ゆ。
見聞行事交際 學年末事務せはしく、一同午後六時半迄、予は夕食後も之を執る。本日は課業を休み、午前九時半より卒業式の演習をなし、次に式の注意事項を訓示し、校内大掃除、式場整理の後、解散せしむ。
所感 昨年の今夜は學年末事務多忙にて、夜業をなし、またうれしき、かなしき事もありしが。
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起居身體 午前七時十五分起床、午後九時半就褥。
見聞行事交際 午後五時過校務を終へたる後、宮崎老祖母君米壽の賀宴にまねかれ行き、晩餐の饗に接し、八時前歸校す。まねかれたるもの役場吏員、巡査、村内重立及び當校職員男三名なり。次の祝歌を短冊にものして呈す。即吟にしてつたなけれど、やむを得ず。
宮崎老祖母君の米壽賀を
やそやつのよはいのさかも君はなほ
のぼりそめたるふもととみるらむ 丈二
巡査酔ひしれてあばれだしたり。酒のみはいとあはれなるものかな。
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雪、今朝積雪約二寸をみる。
起居身體 午前七時十五分起床、午後十時二十分就褥。
見聞行事交際 始業前鈴木村長、近藤學務委員の出校を請ひ、増築教員住宅問題につき協議し、愈設計及び工事費を議決し、予を以て大工に其用材の見積を差出すべく命ずる事とす。新材を用ひて百十圓の予算なり。夕食後大工兩人を召して、予算に從ひ見積を命ず。
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快晴。
起居身體 午前七時半起床、午後十二時就褥。約十日間風邪の氣味去らざりし爲、水浴を廢したりしが、本日また之をなす。
見聞行事交際 昨夜認めたる次の書を清吉大工の出岡するに託して發送す。谷口視學宛、
一、中村君勤續年數は、其後の調査によれば大方十五年以上と斷ぜらる。
一、當校來年度經費上については、愈一學級を減じ、即ち准教員一人を節し、この餘裕もて教員住宅を附設する事に決しぬ。
一、之に依れば來年度は是非教員の改良の必要あり。
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快晴、雪めきゝゝ消ゆ。
起居身體 午前七時半起床、午後十二時就褥。
見聞行事交際 午前一時間授業の後、村役場に開く芹川學區經費豫算會に出席し、開會前、村長、學務委員と原案に訂正を施す。十一時開會、午後一時閉會、原案は無事通過す。いつもながら予の望む所は議員に容れられ、學校事業も着々進捗す。欣ばしきかな。これ村長始め一同予を信頼するによるべし。自ら省みて悦ぶものあり。
夕食後渡辺勇一君がりへ行き、沐浴したる後、歌かるた三番をなし歸校す。すぎ子君は極めて欣喜の色あり。こは木下氏への入籍に對する感想の頓に變りたるものと察せらる。何ぞ其意志の薄弱なる、其識見の幼稚なるや。これ男の味を試みて、忽ち之に酔うたるもの歟。かの父兄にして此の子あるは、あやしむに當らず。予數日前、一旦嫁せば必ず甘んじて前意を翻さんを想像したりしが、果して當れり。然れども、こも暫時の間ならざるか。
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快晴。
起居身體 午前七時起床、午後九時四十分就褥。
見聞行事交際 午前八時出發長岡にゆく。村上屋書店に立寄りゐたるをり、千代子妹來り、予に寫眞挟をおくる。こは妹の手製にして頗る美しきものなり。予はさく子君の實家に歸られし理由、及びすぎ子の不幸を叙し、尚さく子君が將來にとるべき態度に關する、予の意見をそへ、かつ妹が先月師範内に起れる騒擾以降、とかく議あはざりし多數同僚と、殆ど交を絶ちゐる躰なるを否認し、之に處する方法の一般を示したる書と、松田とき子君より託せられし、新聞包とを渡す。
谷口郡視學を訪うて、芹川校來學年度經営上につき協議する所あり。午後二時視學方を辭して歸途につく。
其途中千代子妹に邂逅し、しばし談じて午後五時半歸校す。
谷口視學との協議大要次の如し。
一、中村氏辭職の件は、若し決行の上にて、恩給を受くる恩恵に浴せざる勤續年數とせば、甚だ憫然なるべければ、其履歴再調査の上通報すべし、若し、さなければ其年數に達する迄延期すべしと。
一、芹川校來年度に於て三學級は、予の考案の如く、尋常三四學年の合級を作り、一學級を減じ、准教員を廢して、以て餘裕を機として教員住宅を設立すべきを可とす。
一、予は區内が其俸給の支出に苦しむ、換言すれば校長、校に過ぎたりとの念を抱く形勢をみたれば、來年度轉勤せんと思考す。如何、視學曰く、そは不可なり、村長始め多少の理を解するものは皆、君の就任を希ふものなり。其技量に當らざる俸給に甘んぜらるゝは、實に本職に於ても遺憾とする所なれど、村の經濟の状態が許さず、今暫く耐忍あるべし。しかし此後君が榮轉向上の機に際したるに於ては、決して監督官は之を阻止せず、むしろ其遂行に盡すべし。
所感 あゝ予は省みて心安からざるものあり。予は學校に盡すや、或世間一般者流より以上たらんは、聊か自らも信ずるを得るなきにあらねど、視學は大に予を稱揚せり。敢而予はそれに當らず。
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快晴、予が誕生の記念日なり。
起居身體 午前七時起床、午後十一時就褥す。
見聞行事交際 放課後、校務整理の後、誕生祝振舞の調理にとりかゝり、七時晩餐會を開く。本會に招きしは、職員一同と渡辺國手なりしも、中村君は出岡の都合にて、渡辺君は業務繁忙の爲に何れも會せられず。獻立は白玉團子の小豆粥。午前母上、鹽引、小豆、野菜等をおくり給ふ。加藤みよし子君より誕生祝の状を繪はがきにてたまはる。
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雨。
起居身體 午前七時半起床、午後十二時脇川にて就褥。
見聞行事交際 午前四時出發、脇川自宅に歸る。其途中川袋校を訪ひ、すぎ子の決心の程を太田君に聞きたるに、同子はもう父兄の壓制、奈何ともしがたければ當分其意に從ひ、木下に嫁するに決したりと。松田とき子の談によれば、本日夕刻嫁入せらると。
母上、姉上へ甚五郎弟の病氣治療費請求の件を告げたるに、弟より實家へも請求の書を致したれば、其工面すでに成る豫定となれり。
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風ふき大雨ふる、爲に雪はいたく消ゆ。
起居身體 午前七時五十分起床、午後十一時二十分就褥す。風邪尚癒えず。渡辺國手より熱拂二包を請ひ得て、其一包を就褥前に服す。
見聞行事交際 午前八時半兒童貳拾名〔男兒〕兒童控所にて火中に紙片を燃したるありたれば、檢舉して其發端者を數日間、拘留する事とし、他の者は本日放課後一時間拘留し、訓誡して將來をいましめ放還す。
千代子妹より詳しき封書、郵便にて到着す。其要に曰く、
去ぬる廿四日は僅かなる時間の相違にて、村上屋書店の會見ならで、いと口惜しかりき。昨日〔三日〕松田とき子と渡辺すぎ子にあうて、さく子の實家へ歸りをるは、すぎ子縁付問題に不同意の爲と聞きたれど、先日のさく子よりの書中に、あゝこれが千代子ならばと、いつも思ふとありしよりみれば、多分とき子がさく子に對して不親切なる所のあるより起れる問題なるべしと察せらる。何卒このこと詳しく知らせ給へ。而して之に對する御意見も。すぎ子の一件、兩人より聞きしが、實にすぎ子はあはれの事なるよね。何と無情の父母と兄さんとではないか。我身の幸に比べては、すぎ子の身上雲泥の差よりも尚甚し。あゝかの父母兄さん鬼よりひどい。來る十日には御出岡との事、妾も用事あれば午前九時より十時迄の間に、本屋の前を通るかもしれません。新潟の姉よりをりゝゝ手紙は來れど、少しもかの事を言ひよこしません。多分姉は未だ知らぬのでせう。もうぢきに思出多き日が來ますね。御病氣の記念日も來ますから、御身體を御大切に〔かの事とは兩人間の契約成立の事なり〕。
と。書中さく子實家歸留の件はこの事なり。即ち一枝子が松田とき子にいたくなつきて、夜分はそれと同衾し、老父母のすかし呼ぶをも肯ぜずとて、老父母いたく憤り、さく子に對して散々の苦情をのべられし事あり。さく子は之に耐へかねて暫く實家に逃げて、其怒の静まるをまつなりと。
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風雪。
起居身體 午前七時半起床、午後九時就褥。
見聞行事交際 本日來年度學校經費豫算材料を村長へ差出す。
在京兄上より近況の報告あり。かつ甚五郎弟病氣治療料、調達の件申送らる。太田逸藏君より与板の書店員に託して來書あり。曰く、過日渡辺勇一君來訪あり、「すぎ子の件父母頑硬にして、他の忠言容るゝ餘地なければ、徹頭徹尾前案の通り、木下に嫁す考なり。依而すぎ子に對し説諭ありたし」とありたれば、此上は手を引くの外、策なし。たゞ予はすぎ子に對して最後の決心によりては、之に處するの道あらざるなきを一言しぬ、と。あゝ何ぞ渡辺父兄の頑冥なるや。
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