明治四十年(一九〇七年) 紀元二千五百六十七年
成功の祕訣は目的の一定不變なるにあり
舊臘ふりつもりし雪積れるもの尺許。今朝の初日うけ、まばゆかりしが、後、曇り午後雨となる。
起居身體 午前六時五十分起床、午後十一時半就褥。身體とりたて、の異常はなけれども、舊臘休日に繪畫揮毫につとめたりし疲勞、尚いえず、午後二時間許炬燵にて眠る。
見聞行事交際 午前八時半自宅出發、學校に行き、十時より四方拝奉賀式を舉行し、十一時終り、祝宴を開き、一同午後二時半解散す。四方拝式場に於て、校長として予がなしたる誨告の要旨次の如し。
本年は明治四十年、昨日を以て卅九年は終れり。卅九年はその前年日露戦争もをへ、農作もよくみのり、御同様いとも安けく暮し、心長閑に本分を盡すを得たりき。さて本年もこれに劣らず、幸福に年を終へん事を祈るわけなり。抑、人間は天地間に生じ、自然の規則に支配せられつゝあるものなれば、この天然自然の法によりて起る現象は、到底吾人の如何ともする能はざるものなり。之と相似て人事上に於ても萬事意の如くならしむる事能はざるは、人生の常たり。故に之等意の如くならざるものは、ならざるものと、よくゝゝ悟りなば、人間にはさほどの不平なく心常に泰なり。而して吾人が意の如くなし得るものは、吾人の心、吾人の行爲なり。もとより難きことゝは言ひながら、各人つとむれば、其意を達し得べけん。學校はこの心性を正し、行爲を矯すを大目的となす。されば特にこの方面に對して努力せざるべからず。即ち彼をすて、之に努めば、不平はなく、たゞ善に進む事のみにして、快からん。さすれば年の四十の音に似かよへる如く、始終今年を安く暮し、うれしく過すを得ん。この心もて、心愉快に今年の始終をおくらんかな。
本日の式より兩陛下の御影〔御眞影にあらず〕を安置し、從て式次に多少の變更を加ふ。
本年の御歌題 新年の松
たけたかき門の大松色はえて 光まばゆき初日影かな
つぎゝゝに枝さしのべていやさかえ 鶴をすくはす峯の大松
所感 本年は何事をかすべき、本誌題字に書せるが如く、一定不變たる上は、たゞ之に向て奮進するのみなるべし。あゝ奮進、あゝ邁往。