長男よりメキシコからの手紙 昭和7年2月16日附
前略
永らく御無沙汰致し誠に申訳なかった。別に御変りはないかね。何より其れが遠方に居る兄としては気に掛る。殊に留守番役的な立場に居る貴方に対して。一方、丈穂は御存知の通り、大健康で、大活躍の最中である。先づは御安心下さい。
扨て、去年の十二月中旬に、父上より戴いた御手紙に依れば、母上並びに咲良子が病気との事、少なからず頭を悩まされました。其の後の経過は如何。丈穂は普段でさへも、隙の無いのに、丁度一年の中で一番忙しい十二月の事であった為、遂々今日まで、返事も伸びて申訳ない。なれど今日よりは一ヶ月に一回づつは必ず通信しませう。珍しい事、面白い事、為になる事などを。其れと言ふのも隙のある身にしたからです。其の事に付いては父上より御聞き下さい。余り永く御無音に過ぎし為、一体どれから話を切り出してよいやら、一寸判り兼る。故に只、此の手紙は無音に過ぎし事を許して貰ふ事に止め、且つ又次よりどしゝゝと便りをする事を誓った文として筆を擱く。末筆乍ら、御身体を御大切に、皆様に宜しく。では次より。
昭和七年二月十六日夜十時認む。 メキシコにて 丈穂
光果 殿
追述 別封にてメキシコの写真並びに外国切手を送附しましたから、皆で仲良く見て下さい。(父上への手紙は二月十八日頃出します。)
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