自費出版本のまえがき
本書は、明治時代に教師として生きた一人の人間の真摯な記録です。
右の写真に見ていただける通り、原本は和紙に毛筆書きされた草書体、上代仮名まじりのもので、原稿に起こすには、その一字一句を辿り辿って、初めは手書きで、その後ワープロで打ち直し、完成するには数年の歳月を要しました。その長い作業を続けているうちに、いつしか書き込まれた行間から、人一人の一生がこんなにも哀歓に満ちていて、また現代では考えられないほど細やかな文通、生々しい人の往来交友の、なんと深く豊かであったかという感慨が湧いてまいり、どうしても一人でも多くの方々にこれを読んでいただきたいという願いを抱く原動力になりました。
もともと人の目に触れることを考えずに記された日記のこと故、いくつかの錯誤も、また壮年期には筆の勢いから、登場する方々への配慮を欠いた記述もあろうかと思います。その点はよろしくご寛恕下さるようお願いいたします。
出版にあたりましては、ルビをふるか、現代では難解な語句に解説をつけるか、更に、当用漢字、現代仮名遣いに改めるかなど種々考えましたが、敢えて原文のままとすることによって、記録者の簡潔硬質な文体を維持し、その息づかいをそのまま感じていただいた方がよいのではないかと考えました。
煩わしい語句はとばして読んでいただいても、十分大意はおわかりいただけると思いますので、どうぞご一読下さいますようお願いいたします。
二〇〇三年 三月 末日 三女
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